君や僕にちょっと似ている

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2013年1月1日、青森県立美術館。奈良美智の「君や僕にちょっと似ている」展へ。

初めて奈良さんの展覧会を観たのが2006年の弘前でのAtoZ展でした。開催前にせんだいメディアテークにAtoZサロンと称して奈良さんとgrafの豊嶋さんがいらっしゃって、そのトークセッションを観に行ったことから始まり、弘前でのAtoZ展の本番、その夜のライブイベント「A-Nightで行こう!」(bloodthirsty butchersの爆音に耳が聴こえなくなると思った…)、終わってから仙台で観た映画「NARA:奈良美智との旅の記録」…と、僕にとってはねぶたのようにあっという間に過ぎ去った、ひとときのお祭りのようなものだったと思います。

結局その後奈良さんの近作を鑑賞する機会はなく、6年もの歳月が経って、その間に東日本大震災も起こりました。震災後、奈良さんが仙台のギャラリーにやってきて音楽と写真のスライドショーを見せてくれたのはもう2年前になるのか…。そんな奈良さんがどんな作品を見せてくれるのか、期待が高まらないわけがない。AtoZ展とは何だったのかという点も改めて考えてみたい。そんな気持ちで美術館へ行ってきました。
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元日にしてはそこそこの人出があったと思いますが、奈良さんほどの人気作家の展覧会にしてはかなりゆっくりと鑑賞できました。作品の正面に立ってしばらく物思いに耽っても、作品のディテールに見入ってもほとんど次の人のことを気にしなくても良かった。本当に帰省のタイミングで青森で見られたのはラッキーでした。

初めて見る彫刻作品は、圧倒的な存在感でした。カラフルな絵画に対して金属の量感をまとった対比的な存在。まるで奈良さんの体から分離して出てきた蠢く精霊のようで、身体性が溢れていた。頭がクリスマスツリーのようになっている「樅の子」のように一見ポップなモチーフのものも、表情には神妙な雰囲気が漂っていました。どの彫刻もその表情にはざまざまな感情が混在しているようでした。壁にその顔を向けて展示されている作品は、一見顔と分からないほどの塊で、椹木野衣が美術手帖のテキストで語っていたように、その作品は正面が定められていなかったからこそそのように展示されていたのだと思います。逆にその顔に気がついた時には顔と壁とに挟まれて巨大な顔面に対峙するという、奈良さんの少女の肖像画との対話のような関係を持てるとも言えるのですが、いかんせん彫刻の質感の前にはそこに長居できない。。

青森県立美術館の明るいホワイトキューブや、土壁の暗い展示室が交互に連続する展示空間と、その展示構成はかなり上手く噛み合っていたと思います。特に土壁の空間に置かれたメインの彫刻群から続く2室、ここに順路はありませんが、まず一つの部屋は水戸で震災後に発表したという制作スタジオのインスタレーション。一見AtoZを思わせる展示かと思いきや、前回の小屋的な閉じた内輪的なものというより、一面を開放したひらけたものでした。震災後の水戸での展示に何も創りだせないでいた奈良さんが発表したきっかけの作品だそうで、奈良さんが選曲した音楽も流れていて本当に明るい気持ちになる一室。

もう一室は暗く長いアプローチを経て、明るく大きなホワイトキューブに「春少女」「夜まで待てない」「Cosmic Eyes(未完)」の絵画が贅沢に展示されている空間。真っ白な空間に置かれた多彩な色面の絵画は、土壁の空間との対比が鮮やかで、かなり感動的な体験でした。単純にカラフルで明るいという印象だけではなく、ニュートラルなホワイトキューブに置かれたそれらの絵はどれも多様な表情に映ります。たくさんの色を画面に置きながら塗りつぶして一枚の絵を完成させていく制作工程が知られている奈良さんの、その初期工程のさまざまな色が少女の服にそのまま完成として残されているのはどのような心境からなのか。その答えは一元的に定められるものではないと思いますが、以前の作品に比べてどんどん曖昧になっていく人物と背景との境界にしろ、宇宙のように複雑な奥行きを持った目にしろ、奈良さんの絵の神秘性には飲み込まれそうなほどの磁力を感じました。

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これらの部屋を経て次に訪れる(あくまで順路は無いですが)ビルボード群の一室と、アプローチに登場するドローイング。ぼんやりと浮かび上がるような絵画作品とは対照的な、輪郭線と色面。AtoZでも見慣れたビルボードは今も健在。ダンボールに書かれたドローイングはその正方形のサイズ感も相まって奈良さんの好きな音楽レコードのカバーのようでした。
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ここからアレコホールを経由して奈良美智常設展示室へ。常設展示しているニュー・ソウルハウス、あおもり犬を経て、最後の展示室にWhite Ghostが。これだけ2010年の制作。横浜美術館ではもっと広い空間に展示されていたようですが、ちょっとここは窮屈そうな感じです。展覧会全体の規模は以上のようなもの。新作109点による個展とは言え、その数に対してゆったりとした展示空間があるので落ち着いて観られるのが良かったです。

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展覧会の他といえばミュージアムショップにはグッズも沢山でさすがの混み具合。僕も展覧会の図録など買ってきました。チロルチョコもあってプレゼントにはいいだろうなーと思いつつも、あれもこれもとキリが無くなってしまいそうなので断念。他にはいつもキッズスペースとして使われている部屋が奈良展特設カフェになっていました。待ち合わせの時間つぶしに良いがアクセスが分かりにくいのがミソ。

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展覧会自体、作家の評価のそれぞれは専門家に任せるとして、僕個人、新しい1年の初めに青森県立美術館で奈良さんの作品に触れられたのがどれだけ心の滋養になったことか。しかも母と二人で観に行ったのがさらに感動を共有する機会となって良かったんです。作品を観て感想を言い合っては、意外に近いことを考えていたり、思わぬ見方をしていたり、二人で共有した感動の体験は(たぶん)ずっと語り合えると思います。また、ここのところ仕事でのデザインワーク以外に、個人での制作をずーっとしていなくて(ぼちぼちはしてるんですが…)、自由に絵を描いたり、モノを作ったりという制作欲が遠ざかっていました。この世にある全てものは、何モノでもない、誰かが想像して妄想して瞑想して頭の中に浮かび上がったモノが形となって現れたもの。もっと妄想して自由に手を動かして、やりきって、いいモノつくるぞー!!と奮い立たせてくれるには十分過ぎる、タイミングと環境と、感動的な体験をもたらしてくれました。

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